三代目 久一の「味噌通信」

昭和47年5月13日 新聞掲載

新聞掲載記事  先々代は、国交開始直後の中国を国賓扱いで訪問したり、祖母を伴ってヨーロッパへ行ったりと当時にあっては、異国の文化に触れる機会が多かった人でした。仕事の傍ら、教育委員長を長年していた先代は教育関係の会のご挨拶で、「(日本人としての)紳士淑女を育ててください」と 話していたそうです。それと言うのも、先々代の直に触れたイギリスの旅の経験が伝え刷り込まれたのかもしれません。 「ヨーロッパでは、代々伝わる食器をとっても大切にしているんだよ!」 と祖父が話していた言葉を思い出しました。それにしても、文中の「約千円もの謝礼」に、固まってしまった||||||||||(_ _。)||||||||  40年近い年月は、貨幣価値をこんなに変えたのね。。。。 2009.04.09
新聞掲載記事 庭のカタバミ

◆1972年5月13日「日本醸造公論」掲載記事の抜粋

《本文》 ロンドンのタクシー 山 田 久 一  高度経済成長のひずみは、人間性、非人間性からひいては家庭愛までも破壊しようとしている。個人と人間のゆとりを忘れ、浅薄なレジャーに狂奔している人間が巷にあふれ、日常生活に暗い影を投げかけている。  古いヨーロッパを、わずかの期間めぐり歩いてみて、ヨーロッパの人たちが、焦らず、悠々と暮らしている姿に、私は豊かな心ゆかしさを感じ、心のなごみ温まる思いがした。 フランス人は、人と会えば、笑顔で語る。ドイツ人は翌日になって笑う。しかし日本人は永久に笑えない国民だと聞かされた。  彼等はまた、常にエチケットの観念強く、相手方の好意に対しては、言葉と物で、心の豊かさを表している。  旅行の最後に、ロンドンでのタクシーのできごとである。地図の見せ方が悪かったのか、運転手が、方向をまちがえてしまい、2~300円で行けるところなのに、15~1600円も走りつづけている。そこで「ミステーク」を連呼して車を止め、地図を見直して反転したのだが、とうとう3000円もオーバーしてしまい、ようやくのことで宿に着いた。まったく知らぬ異国の地のこととて、ホッと胸をなでおろした。  そして、代金はときくと「ノーマネー、ノーマネー」と、両手を交又して金はいらないという。  約千円もの謝礼をすると「サンキューベリマッチ」と笑みを浮かべて別れていった。  私は、このタクシーの運転手に、伝統的な紳士の国のプライドをまざまざと見た。そして、心の豊かさは、金では買えないと、その尊さを実感として味わったのだった。  さて、羽田に着き、タクシーに信濃町までいくらときけば、「3000円」という。空港タクシーの乗り場から乗ったら、なんと1300円あった。日本人の情けなさを帰国第一歩で味わったのだった。  時は流れ、時代は進む。しかし、古くして新しい世代に伝統日本人の人間愛を培い、明るく住みよい社会の建設が今ほど大切な時はないと痛感したことだった。  味噌は、古くより伝わる伝統的食品である。だが、常に新しい時代の要求にこたえ、時代にマッチした味噌の生産にいそしみたいと思っている。 【筆者は新潟県豊栄市葛塚、ヤマヤ味噌醸造元山田醸造㈱社長】
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